2006年 02月 28日
帰りちょっと時間があったので駅前の床屋さんに入った。 別に髪が気になってたわけではないが、始めての土地の小さな床屋さんに入るのが好きなのだ。 カット、シャンプー、顔剃りで¥2000-。 ガラスの扉に張られた赤と青の動脈と静脈のカッティングシートの間から店内をのぞくと、 椅子は5席あり50代のダンディーな店員と60過ぎの小柄な店員の二人、 そしてダンディーなほうの店員に髪をセットしてもらっている40代のお客がひとり。 気づかれないようにそっーと扉を開けて中に入ると、 手が空いてスポーツ新聞をソファーで広げてた60過ぎの小柄な店員がワタクシの入店にやっと気づき、 「なにもそんなにあわてなくても・・・」ってくらいあせって新聞をワシャワシャたたんだ。 それからまるで将軍様をお迎えするようなぎこちない仕草で椅子へ案内され、 こちらとしては少々気後れしてしまった。 さらにどういうわけかこの人一度もワタクシと目を合わさず、 絶えず頭をペコペコ下げ続けるのである。 少々古めかしい椅子に身長178センチのワタクシが座ると、 150センチにも満たないそのおじさんはどう考えてもワタクシの頭の頂点が見えてない。 時々なにかつぶやいていたがいったい何を言っているのか誰に言っているのか分からずにいると 突然ワタクシの右の耳元で「本日はいかがいたします?」と、ささやいた、そう、ささやいた、のだ。 「えー、1センチくらい切って全体を軽くすいてください。」と言うと、 右の耳元で「はぃ、かしこまりました。」と再びささやく。 「うん?ちょっとこの空間、妙だな」と思い始め、 ワタクシと背中合わせの椅子で別の客の髪をドライヤーでセットしているダンディー店員を視野の端っこで見ていると、 絶えずこちらの小柄なおじさんとワタクシの方をちらちらと気にしている。 ダンディー店員がこちらを気にするわけがだんだん分かってきた。 どうやらダンディーがこの店の店主で、こちらのちっちゃいおじさんはごく最近雇ったばかりの店員なのだ。 おじさんは新しいタオルやカミソリなんかが入っている引き出しをしょっちゅう間違えて開けていた。 このミニおじさん、すべての行動が妙にヘンなのだ。 最初は何がヘンなのか分からなかったのだが、よく分析してみるとようやく分かってきた。 リズムだ。すべての行動や仕草のリズムが中途半端なのだ。 くしで髪をとかすとき、上からスッー、スッー、ス。 はさみで切るとき、チャキン、チャキン、チャキ。 洗髪するとき、ゴシ、ゴシ、ゴ・・・ゴシ、ゴシ、ゴ・・・ゴシ、ゴシ、ゴ・・・。 ゴで止めるな、シまで行ってくれぇ、もうオネガイ。 「どこか痒いところございますか?」って、あなた!! 延々と頭の地肌をそのリズムでしかも微妙なタッチでやられたら、 もうすでにかきむしりたくなるくらい頭全体がカユクテ、カユクテたまらんですよ。 イライラしてきて目をつむってると、なんだかやたらと椅子の周りをせわしなく歩いてる。 タオルやドライヤーを取りに行くとき、ピョコタンピョコタンと足音が気になる。 さらにいちいち次の作業に移るとき、たとえば髪切りが終わり椅子を倒すとき、 顔にタオルをかけるとき、毎回「申し訳ございません、申し訳ございません」と2回言う。 とどめは椅子を起こしたまま頭にシャンプー剤をかけてるときだった。 景気よくドバドバかけるのは結構なのだが、背丈の差が大きすぎて頭頂部が見えないためか、 顔面にまでダラダラと白糸の滝状態にシャンプー液が垂れてきた。 もうここまでくると非常に興味を持ってきた、嫌味でなくホントに。 このピョコタンおじさん、いったいなんでこの年になってこの地方の駅前の床屋さんで「新米」なんかやってんだろう? 言葉もちょっとどこかのお国言葉のニュアンスが漂ってる。 多分・・・ もっともっと地方の過疎地域で店を持っていた。 でも不景気とそんな地方にまで押し寄せる低価格競争にどうにも経営がたちゆかなくなり 仕方なく35年続けた店をたたみ流れ流れてこの店にやってきた。 おじさんの長男と次男は先行きの明るくない家業に小さいときから本能的に見切りをつけており 今では都会でそれぞれサラリーマンと長距離トラックの運転手をしている。 妻はずっと先の旦那の帰りをひとり待ちながら故郷で家を守っている。 でもね、このちっこいおじさん、ワタクシは好きです。 時折ワタクシのうなじなんぞに触れるおじさんの指の肌が温かくて柔らかい。 本当に頭が低くて人柄がよさそうです。 散髪が終わり席を立ち会計を済ませるためダンディー店主がいるレジカウンターへ行くときも、 ずっと大きな刷毛を持ちながらワタクシの背中やらひざ裏やらをパタパタはたきながらついてくる。 「申し訳ございません。ありがとうございました。」と言いながら。 たとえ商売といえ自分よりだいぶ年配の方にそこまでされちゃうとこちらが恐縮しきってしまい、 「いやいやホント丁寧にやっていただきありがとうございました。」と本心で言った。 でも最後まで決してワタクシの目を見ないのですけれどね。 カウンターで料金を払うとき「えーと、二千円でよろしいんですか?」ときくと、 店主は少し顔をしかめながら、 「はい、・・すみません、だいぶお時間がかかってしまいまして。次からはもっと早く仕事をさせますので。」・・・ 時計を見ると店に入ってすでに1時間5分が経っていた。 店主からしてみれば、1時間以上かけて仕事をして¥2000-の売り上げではやっていけるわけがない。 ちょっと気になって振り返ってみるとおじさんはさらにひとまわりも小さくなって、 チョコマカ、チョ・チョコマカ、チョと2センチ以上も長く切り落とされたワタクシの髪をほうきで掃いていた。 これでサッパリ、少々バッサリ行き過ぎましたが、明日から解禁が迎えられそうです。 雨だけど。
by flyfishist
| 2006-02-28 23:07
| 大好きなモノ
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Comments(1)
Commented
by
kuroya
at 2006-03-01 18:43
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なんかさぁ・・・
しみずさん、茶髪のおっさんみたいな写真 はじめ、誰の頭だかわかんなかった。 今日はNetscapeから書き込みが出来なかった なんかご機嫌悪いみたいで、文字を打っても透明なの で、今日の河津川はどうだったのでしょう きっと良くなかったんでしょ? でったいにそうだ、そうに決まってますよね 今週末どうします? どっか泊まりますか? 例の百笑体験してみます?
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